#イベント

新しい建材の可能性を求めて
建築学生ワークショップ2022宮島

建築学生ワークショップ 第7班

1875年の再建から145年、現在「令和の大改修」が行われている厳島神社の大鳥居。
そんな歴史的事業が進む聖地で、次代の建築を担う学生たちが全国から集結し、10体の「小さな建築」を実現しました。学生たちの柔軟な発想による作品は見ためのインパクト・美しさはもちろん、新鮮な驚きや気づきに溢れ、これまでにない建築の可能性を私たちに示唆しています。
今回、私たちは最優秀賞作品に輝いた班の学生たちから、「建材としてロウを使いたい」というご相談を受け、技術的なアドバイス等を提供させていただきました。
実際にどんな点に配慮されたのか、制作過程におけるご苦労や工夫点をお聞きしています。

  • 学生ワークショップでロウを使った建築に挑戦
  • 新領域で活躍する素材としての可能性に期待

発想力を競い合う建築ワークショップ

AAFが主催する「建築学生ワークショップ」とは、建築や環境デザインを学ぶ学生たちがキャンパスを離れ、国内外で活躍する建築家を中心とした講師陣のもと、場所性に根づいた実作品を作ることを目的としたワークショップです。
2001年より開始され、2010年からは歴史的に貴重な聖地を舞台に、「神聖な場所を受け継ぐワークショップ」として展開。本年は大鳥居の大改修が進む、宮島・厳島神社で開催されました。

今回、ワークショップには全国から公募で募った50名が参加。8月23日〜29日まで合宿にて宮島に滞在し、それぞれの作品づくりに挑みました。
合宿に至る前、学生たちは10班に振り分けられ、初対面となるメンバーとのグループワークを開始。実際に施工する建築物のコンセプトを確認し合い、素材や工法の検討などを行いました。
「建築空間として、私たちにあてがわれたのは、参拝経路である東回廊の左手にあるスペース。参拝者が立ち入ることのできない空間は、どこか人の立ち入りを一瞬迷わせる、“ひやりと感じさせる何か”があるように思いました。」
そう語るのは、ロウを使ったフォリー*注1制作に挑んだ7班の学生たち。
その目に見えない何かを感じ取るため、お寺や神社でもよく利用される蝋燭のロウを使って、神仏のエネルギーを可視化させる建築物をつくろうと考えたそうです。
*注1 フォリー:庭園内に配置される装飾的な建築物・工作物など。

建材としては未知の素材、ロウ

しかし、途中段階の講評会で斬新な素材の思いつきは評価されるものの、誰も扱ったことのない素材であったため、「本当に実現できるのか?」という点をかなり指摘された学生たち。

「講評会では、『柱は少なくとも人がくぐれる高さ(2mほど)が欲しいね』とアドバイスをいただきました。ですが、本当にそれだけの高さが出せるのかは実験してみないとわからないし、ロウの専門家からも技術的な知識を教わりたいと思いました。」

そこで7班の学生たちは実験を行うかたわら、ロウに関するアドバイザーを探すことを決意。ご縁があって、当社にたどり着かれました。
実験の結果、素材そのものの強度を上げるにはどうしたらよいかという点に一番悩まれていたようで、当社からは強度を上げるための混合物の提案をいくつか提示させてもらいました。
また、そもそもどうやって加工するのかといった点も問題でした。学生さんたちは光を透過する性質を生かすため、空洞の柱の作成を目指しており、最終的にはロウのつきがよいワックスペーパーを丸めて芯材にし、バームクーヘンを作るような要領でロウを垂らしていったそうです。その後、芯材を抜いて、空洞の柱を完成させました。

持続可能な社会づくりにも貢献

学生さんたちは太陽があたって溶けていく過程をコンセプトのひとつと捉えていました。ロウはものにもよりますが、生分解性、すなわち微生物により土壌で分解される性質を持っています。熱によってロウの形が変化する様は何とも儚いものですが、自然の移ろいゆく様をみごとに表現していました。
また、最終審査の段階では建築が取り壊された後の再利用…「サーキュラーデザイン」といった観点も大事な要素のひとつでした。プレゼンテーションでは明らかにされていませんでしたが、ワークショップ終了後の挨拶で、宮島大聖院の吉田座首から、学生たちが使用したロウを霊火堂の「消えずの火」に再利用されることが発表されました。

祈りの場には欠かせない素材であるロウ。その素材を建材に利用するという柔軟な発想が評価され、第7班のメンバーたちはみごと本年度の最優秀作品に輝きました。
素材をコントロールするといった点ではまだまだ検討の余地はありますが、新たな可能性を見出してくれたことは、我々にとっても喜ばしいことです。今後もブラッシュアップされたアイデアが若い世代から誕生し、建材だけでなく、意外な分野でロウが使用されることに期待します。

企画概要

クライアント 建築学生ワークショップ 第7班
期間 2022年

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