石油ワックスの規格 Standard

石油ワックスはその特性を利用した用途が多岐にわたっているため種々の規格があります。代表的な規格を紹介します。

A.日本産業規格品(JIS K 2235)

各種定義の他、種類・試験方法(融点・針入度・反応・油分・ちょう度 等)を規定しています。パラフィンワックスとマイクロワックス(一般的には、マイクロクリスタリンワックスとも呼ばれる)は融点により、ペトロラタムは色相により区分しています。それぞれの規格値は表1~3の通りで、ここに規定されている試験法は石油ワックスの特性を知る上で重要です。

【表1】パラフィンワックス

区分 融点 針入度 反応 油分 セーボルト色
25℃ 35℃ 質量%
120P 48.9以上
51.7未満
30以下   中性 0.8以下 +26以上
125P 51.7以上
54.4未満
25以下   0.5以下 +28以上
130P 54.4以上
57.2未満
  50以下
135P 57.2以上
60.0未満
  40以下
140P 60.0以上
62.7未満
  30以下
145P 62.7以上
65.5未満
  25以下
150P 65.5以上
68.3未満
 
155P 68.3以上
71.0未満
 

(注)1.融点範囲の下限値℃を゚Fに換算した数字にパラフィンのPをつけたもの。

【表2】マイクロワックス

区分 融点 針入度 反応 油分 ASTM色
25℃ 質量%
150M 60.0以上
68.3未満
50以下 中性 5以下 2.5以下
160M 68.3以上
76.6未満
40以下
170M 76.6以上
82.1未満
3以下 2以下
180M 82.1以上
87.8未満
30以下
190M 87.8以上 2以下 1以下

(注)2.融点範囲の下限値℃を゚Fに換算した数字にマイクロクリスタリンワックスのMをつけたもの。

【表3】ペトロラタム

区分 通称 反応 引火点 動粘度 融点 ちょう度 全酸価 ASTM色
mm2/s
(100℃)
mgKOH/g
1号 ダークグリーン 中性 190
以上
15〜30 45〜80 80〜140 0.1以下 6.5Dil以下
2号 グリーン 8.0以下
3号 アンバー 10〜20 140〜210 4.5以下
4号 ライトアンバー 3.0以下

1. 融点(JIS K 2235 6.3)

石油ワックスはガスクロチャートを見てもわかる通り複数の炭化水素から成立っているため、融け始めから融け終るまでかなりの時間を要します。このため独特な方法を採用していますが、パラフィンワックスとマイクロワックスは全く異なった方法で測定します。

a. パラフィンワックスの場合

図1の装置を使用し、融かした試料を①の試験管に⑧まで入れ、15秒ごとに④の温度計の示度を読みとり、温度降下が一定範囲内(0.1℃以内の差が5回続いた時)の温度を融点とします。図示すると図2になります。

b. マイクロワックスおよびペトロラタムの場合

パラフィンワックスより結晶性が低いため温度降下が一定範囲内になりにくく別の方法が用いられます。 ①の温度計を5℃に冷却し、その先を融けている試料中に入れ、すばやく引き上げると温度計の先端に試料が固化して付着します。これを図3のエアージャケットに入れ、1℃/分の割合で昇温していき、付着した試料が落下した時の温度を融点とします。

2. 針入度(JIS K 2235 6.4)

石油ワックスの硬さを求める測定法です。図4の測定装置で規格温度下定められた針に100gの荷重をかけ、5秒間で試料に何mm進入するかを求め、この10倍の数値で表します。

3. 油分(JIS K 2235 6.6)

石油ワックスは油の中から分離採取されるので、製造条件により多少の油が残留しています。
油分とは、1gの試料を15mlのメチルエチルケトンに溶解し、-32℃に冷却して析出するワックスをこし、ろ液中の溶剤を蒸発させて残油の質量を測り、質量%で示します。

4. ちょう度(JIS K 2235 6.10)

ペトロラタムの硬さを求める測定法です。以下省略します。

B.食品包装用ワックス

1.食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度

食品衛生法等の一部を改正する法律(2018年6月13日公布、2020年6月1日施行)により、食品用器具・容器包装について、安全性を評価した物質のみを使用可能とするポジティブリスト制度が導入されました。この食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度(経過措置期間は2025年5月31日まで)は合成樹脂を対象としており、2021年12月24日公表のポジティブリストにパラフィンワックス(マイクロワックス含む)は添加剤として別表第1第2表に収載されています。内容は表4の通りです。

【表4】別表第1第2表(2021年12月24日公表)

通し番号

和名

合成樹脂区分別

使用制限(%)

特記事項

1161

パラフィンワックス(石油由来又は合成されたアルカン)(マイクロワックスを含む。)

合成樹脂区分1~7:50

36g/m以下で塗布することができる。

紫外線吸光度(光路長1cm当たりの最高吸光度)は次のとおりであること(石油パラフィンに限る)。

280~289nm  0.15

290~299nm  0.12

300~359nm  0.08

360~400nm  0.02

2.食品包装用石油ワックスおよびその配合体の性状規格

現在の食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度は材質の対象を合成樹脂としています。このため、合成樹脂以外の材質に使用する石油ワックスの品質は、日本ワックス工業会が制定した基準となります。この基準は、後述のFDA規格(紫外吸光度の制限)および厚生省告示第370号(重金属、過マンガン酸カリウム消費量の規制)に準拠したものです。これらは表5のとおりです。

【表5】食品包装用石油ワックスおよびその配合体の性状規格

融点 規格値 備考
(a)重金属(Pbとして)
(b)過マンガン酸カリウム消費量
(c)紫外吸光度
1ppm以下
10ppm以下
限度内
厚生省告示第370号準拠
厚生省告示第370号準拠
FDA§172.886準拠
(1)厚生省告示第370号による溶出試験における溶出温度60℃を40℃とする。
(2)石油ワックスについては全項目、配合体については(a)(b)項目を適用する。
添加される配合剤は食品衛生上の安全性が確認されたものに限る。

C. FDA規格

アメリカの食品医薬局(FDA)の規格ですが、世界的にも権威があり、前記の食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度に於けるパラフィンワックスの規格及び食品包装用石油ワックスの自主規制規格にも採用されていますので、紹介いたします。
石油ワックスは工業用の他に食品添加物や直接食品に接する包装材として使用されているため高い衛生性が要求されます。そこで、1958年にアメリカ石油協会は石油ワックスの安全性評価のため莫大な費用と時間をかけ研究にのりだしました。この結果、特定の波長の紫外吸光度が一定値以下なら石油ワックスは発ガン性および一般毒性について問題がないことが確認されました。
そこで1964年にFDAはこの調査結果に基づき、紫外吸光度の測定方法と上限値を定め、これ以下の石油ワックスを食品添加物として使用することを認可し安全性を保証しました。この上限値は表6の通りです。

【表6】石油系ワックスに対するFDA規格 (FDA§172.886)

波長 紫外吸光度
280~289 nm 0.15以下
290~299 〃 0.12 〃
300~359 〃 0.08 〃
360~400 〃 0.02 〃

D. 医薬部外品原料規格

化粧品原料基準および化粧品種別成分配合規格は廃止され、医薬部外品原料規格2006(2006年4月施行)に収載され、2021年3月の改正により医薬部外品原料規格2021となりました。成分名称としてパラフィンワックスは、パラフィン、低融点パラフィン、高融点パラフィン(1)、高融点パラフィン(2)の4成分、マイクロクリスタリンワックスは、マイクロクリスタリンワックス、高融点マイクロクリスタリンワックスの2成分、さらに合成炭化水素ワックスが収載されております。成分ごとに成分規格の記載があり、性状、確認試験、融点、純度試験(液性、イオウ化合物、重金属(Pb)、ヒ素、硫酸呈色物など)、強熱残分があります。

E. 日本薬局方

パラフィンは第十八改正日本薬局方(2021年6月改正)に「石油から得た固形の炭化水素類の混合物」と定義され、性状、確認試験、融点、純度試験(酸又はアルカリ、重金属、ヒ素、硫黄化合物、硫酸呈色物)に基準を設けています。
またマイクロクリスタリンワックスについては、医薬品添加物規格2018に「石油から得た固形の炭化水素類の混合物で、主として炭素数が30~55のパラフィン」と定義され、性状、確認試験、融点、純度試験(色、酸又はアルカリ、重金属、有機酸類、油脂又は樹脂、多環芳香族炭化水素)、強熱残分に基準があります。

F. 食品衛生法

パラフィンワックスとマイクロクリスタリンワックスは、第9版食品添加物公定書に収載されています。
パラフィンワックスは「石油の常圧及び減圧蒸留留出油から得られた固形の炭化水素の混合物で、主として直鎖状の飽和炭化水素から成る」と定義され、成分規格として、性状、確認試験、融点、純度試験(鉛、ヒ素、硫黄化合物、多環芳香族炭化水素、硫酸呈色物)、強熱残分があります。
マイクロクリスタリンワックスは「石油の減圧蒸留の残渣油又は重質留出油から得られた固形の炭化水素の混合物で、主として分枝状及び直鎖状の飽和炭化水素から成る」と定義され、成分規格として、性状、確認試験、融点、純度試験(鉛、ヒ素、多環芳香族炭化水素)、強熱残分があります。